
全世帯数のおよそ3割が単身世帯となった日本。にもかかわらず、ひとりで住むための住宅を購入するとなると、選択肢は大きく狭まる。「オトナのひとり」住宅市場は、遅れていると言っていいだろう。働くオトナ、自立したオトナが理想の住まいを手に入れる方法のひとつが、中古マンション購入+リノベーションだ。アートアンドクラフト社(大阪市)が手掛ける「オトナのひとり住まい」プロジェクトで、実際に理想の住まいを手にいれた大阪市の女性Iさんの実例を紹介しよう。
広々ゆったり暮らすため、築42年の2LDK(62m2)をワンルームに
好きなものに囲まれて生活したい。自分の生活スタイルに合った住まいで暮らしたい。自立したひとりの女性が、そんな理想を描いたとき、「一戸建ての注文建築ぐらいしか頭になかった」と、Iさんは言う。しかし、土地を買って、注文建築で家を建てるとなると、大きな資金が必要になる。中古マンション+リノベーションという方法を知り、これだ。と決めたIさん。
既存マンションの多くはラーメン構造といって、梁(はり)と柱に囲まれた専用空間の中では、間取りが自由に変更できる(一部壁式構造のマンションでは、取り除くことのできない壁が室内にある場合もある)。ひとり暮らしのスペースとして、マンションの区分所有の空間は、理想の暮らしを描くための最適な空間かもしれない。
中古マンションのメリットの一つに、立地がある。Iさんも、通勤の利便性、周辺の環境を考えて、物件選びをした。「公園の近く、できれば水面も近く」そんな希望をかなえてくれたのは、築42年、約62m2の2LDKのマンションだった。
「リノベーションを前提で、素材となるマンションを選んでもらいました。物件によっては希望どおりの改装ができないものもあるらしいです」。リノベーションは、構造によって、水まわりの配置が制約を受けたり、マンションの管理規約に縛られたりする場合もある。スムーズにリノベーションを実現するためには、素材選びから専門家の目が必要ということだ。
立地も環境もほぼ理想に近い8階の2LDKの部屋を、どう改装したのだろうか。
「以前は、壁で仕切られた個室のある一般的なマンション住まいでした。でも、実際に生活してみると、仕切られた使わない部屋は使わないまま。だったら、ワンルームでいいのかなと」。間取りは、極力、壁で仕切らず、扉もなし。できるだけ部屋全体が広く見えるようにレイアウトされたプランが出来上がった。
玄関を入ればバルコニーまで、ゆったり開放的な空間が広がる。広い土間の右手には、約8m2の大きなWIC(ウォークインクローゼット)。ここに生活道具をまとめて収納しておけば、部屋にモノがあふれることもない。

【画像1】引き戸で隠すWIC。らくがきも楽しい黒板塗装の壁面(画像提供/株式会社アートアンドクラフト)

【画像2】ハンガーパイプ、棚板も整理しやすくレイアウト(画像提供/株式会社アートアンドクラフト)
すぐ左には、本来隠されてレイアウトされる洗面台が、玄関から見えるところにある。
「納まりきれなかったのが、ホントのところです。でもむしろ機能的に便利ですね」。キッチンは、シンクと大きなカウンターテーブルがつながっていて、調理も食事も、まとめてここでできるという。「こうすれば、別に大きなダイニングテーブルも不要ですし、友達と一緒に料理をつくって、食べて、すべて1カ所でできます」

【画像3】玄関入ってすぐ。便利な場所に洗面台(画像提供/株式会社アートアンドクラフト)

【画像4】つくって、食べて、楽しむため、広いテーブルを兼ねたキッチンを部屋の中心に(画像提供:株式会社アートアンドクラフト)
リビングの横は、ベッドスペース。ここにも扉はない。仕切りとまで言えない壁が少しあるだけ。ひとり暮らしの気ままさが生んだレイアウトだ。小上がりのベッドスペースの下には収納もある。

【画像5】ナチュラルな素材感でリゾートホテルのようなテイストを(画像提供:株式会社アートアンドクラフト)
差し込む陽光が部屋全体にひろがり、窓から見える公園の緑と、土間スペースに置かれたグリーンも目に入り、リゾートホテルのような風情も感じる。「出張でよく行く、海外のホテルのような心地よい空間にしたいという意識があったかもしれません」
休日は家で過ごすことが多いとおっしゃるIさん。「部屋の中でも、自然を感じられる”おそと感”が、ポイントかな」
理想の住まいづくりを目指して、コツコツ写真も集めたIさん。計画してから、完成、引越し、そして「家にいることが楽しいし、友達も集まってここでワイワイすることも多くなり、暮らしも変わりました」と語る。
まず大切なのは、物件探しから任せられるパートナー選びだと、Iさんは言う。そして、設計士やコーディネーターに、しっかりしたイメージと実現したいことを具体的に伝えること。そんなコミュニケーションが大事なのだそうだ。Iさんの場合には、雑誌やWEBから集めた写真が役立ったらしい。理想の住まいを現実に形にするためには、労力もいる。「最後のほうは、ま、これでいいか……となりましたけど、楽しめました」と語る。もともとインテリアには興味もあったIさん。自分のための中古マンション+リノベーションは、「究極の趣味」だそうだ。
●取材協力・株式会社アートアンドクラフト元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/03/108465_main.jpg
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